プレスリリース

  PRESS RELEAS




(博士課程)医療科学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Medical and Dental Sciences
(修士課程)保健学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Health Sciences


2026.08.22
遠隔リハビリテーションにおける目標設定は,対面の実戦をそのままオンラインに移したものではない<日本の作業療法士・理学療法士を対象とした質的研究>

研究紹介

 遠隔リハビリテーション(テレリハビリテーション)は,ビデオ通話などの情報通信技術を用いてリハビリテーションを提供する方法であり,近年世界的に拡大し,COVID-19パンデミックを機にその普及が加速しました.リハビリテーションの中核には,対象者と専門職がともにその人にとって意味のある目標を立てる「目標設定」があります.しかし,触れることも生活場面を直接見ることもできない遠隔環境でセラピストが実際にどのように目標設定を行っているかは,これまでに明らかにされていませんでした.特に,遠隔リハビリテーションの実戦が定着していない日本を含む東南アジアにおいては,遠隔リハビリテーションでの目標設定について,セラピストの経験を質的に検討した報告はありません.そこで本研究では,遠隔リハビリテーションの経験をもつ日本の作業療法士・理学療法士を対象に,遠隔での目標設定の経験を質的に探索しました.

研究のポイント

 遠隔での目標設定は対面の実戦を単にオンラインに置き換えたものではなく,独自の準備,協働,不確かさへの対処を必要とする臨床プロセスであることがセラピストの語りから明らかになりました.また,対面での評価と遠隔での対話,モニタリングを組み合わせるハイブリッド型の可能性が示唆されました.

研究内容

<方法> 
 遠隔での目標設定の経験をもつ日本全国9施設のセラピスト9名(作業療法士7名,理学療法士2名)を対象に,2022年9月~10月にZoomによる半構造化個別インタビュー(18~51分,平均32分)を日本語で実施しました.データはBraunとClarkeのリフレクシブ・テーマティック分析(reflexive thematic analysis)を用いて分析し,報告はCOREQチェックリストに準拠しました.

<結果>
 分析の結果,以下の4つのテーマが構成されました.
1)見えなくなる遠隔評価の不確かさ(9名中9名):触れられず,画面に映る範囲の情報しか得られないことで,評価と目標の擦り合わせへの自身が揺らぐ.
2)介入からコーチングへ(9名中8名):手で治す役割から,視覚教材やセルフモニタリング(歩数計やチェックシートなど)を活用して本人の振り返りを支える役割へと変化する.
3)自宅だから見えるニーズ(9名中6名):本人がくつろげる生活の場でのセッションでは,暮らしや家族の状況が見え,日々のニーズが目標を具体的にしていく.
4)「続ける」が目標になる(9名中6名):機能改善だけでなく,つながりを保ち,変化を見守り,サービスの中断を防ぐこと自体が臨床的な意味を持つ目標となる.
5)これらのテーマは「制約(テーマ1)」への「適応的な応答(テーマ2・3)」が「目標の再定義(テーマ4)」につながるという構造として解釈されました.

研究の意義

 本研究の結果から,遠隔での目標設定には事前の情報収集や視覚資料の準備,本人・家族との協働,不確かさへの対処といった対面とは異なる臨床スキルが必要であることが示唆されました.遠隔リハビリテーションの導入にあたっては,通信環境の整備だけでなく,こうしたスキルを支える研修やサービス設計が重要と考えられます.また,ハンズオンの評価が必要な場面は対面で行い,目標の対話,モニタリング,見直しなどは遠隔で継続するといったハイブリッド型の提供モデルが今後の実戦の一つの方法として提案されました.なお,対象者本人や家族の視点からの検討が今後の大きな課題です.

論文情報

Okita Y, Tomori K, Okita M.
Goal Setting During Telerehabilitation in Japan: Quanlitative Study of Occupational Therapists' and Physical Therapist's Experiences Using Reflexive Thematic Analysis.

JMIR Rehabilitation and Assistive Technologies, 2026; 13:e101355(Open Access, CC BY 4.0). doi: 10.2196/101355

問い合わせ先

スウィンバーン工科大学 健康科学部
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 運動障害リハビリテーション学研究室 研究協力員
沖田 勇帆(オキタユウホ)
E-mail: yokita@swin.edu.au


痛みコンテンツ



長崎大学

 〒852-8520
 長崎県長崎市坂本1-7-1
 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
 運動障害リハビリテーション学研究室
 TEL 095-819-7967
 FAX 095-819-7967






バナ